あらすじ

「――そして彼は…………すまない。つい黙ってしまった。彼は……私を支えてくれた側近であり、そして……友であった。心から追悼の意を」 国営放送の収録。執務室、カメラの前で彼はそう締めくくった。彼、と呼ぶのも畏れ多いその男はこの国の独裁者。 わざとらしい間の若干、白々しい演技だったが、それを指摘できる者はいない。テレビクルーもそそくさと執務室を後にした。 そしてそう、演技。たった今彼が追悼の意を示したその側近は彼が殺した。正確には彼がその側近の乗るヘリコプターを撃ち落とすよう命令を下したのだった。 理由は単純でそして根深い。歴史上、独裁者たちを蝕んできた特有の病からくるもの。『疑心暗鬼』だ。彼は側近が今に裏切り、自分の命を、その地位を手にしようとしていると思わずにはいられなかったのだ。しかし、それが解消された今、彼の表情は随分と柔らかくなった。祝いだ。今夜は別荘に愛人を呼び寄せよう。そう思うと顔の筋肉は益々弛緩する。しかし……

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2024/02/18
  • 現在の作品独裁者誕生