あらすじ
『止まって! 前の車止まりなさい!』
ある夜。サイレンを鳴らすより先にスピーカーからそう呼びかけたパトカー。たった今、偶然にも事故の瞬間を目撃したのだ。乗用車が自転車にぶつかり、そして走り去ろうとするのを。
問題の車の運転手は観念したのだろう、車を道の脇に寄せ、止めた。パトカーから降りた警官が近づく。
「はい、窓開けて。自転車にぶつかったの自分でもわかってたよね? おまけに赤信号で――」
「あの私、女なんですけど……」
窓を開けた運転手は警官に対しそう言った。警官は目を丸くし息を呑んだ後、言った。
「え、ああ、これはどうも……」
「あと私、母親なんですけど」
「お、おぉ……で、ですが轢き逃げはさすがに」
「クーポン券あります」