あらすじ
「やっぱり婚約破棄はひどいと思うの」
「お嬢様...............それ何回目ですか?」
侍従であるレタが、私の言葉に呆れ顔で返す。
私は冷め切った紅茶の入ったカップを手に取り、それを口元に持っていきながら小さく肩をすくめた。
「だって、仕方なかったとはいえ、強引に悪役令嬢にされて断罪されるのよ? その上婚約破棄までされて.............こんなにひどい話はないわ」
「..............まぁ、確かにそうですけれど...........」
私が言うと、レタは何とも複雑そうな顔をしてこちらを見た。
私が今いるのは、王都から少し離れたところにある避暑地の別荘だ。
父は現宰相で、今はかなり忙しい身ではあるけれど、それでも仕事の合間にこうして休暇を取っては家族で過ごす時間をくれる。
そんな父がこの別荘を提供してくれたのだが、使用人の数は最低限にするというこだわりっぷりだ。
まぁ確かに人数は少ない方がこぢんまりとして過ごしやすいし、何より身の回りのことはほとんど自分でやらなければいけない分、気楽だという利点があるのだけれど。
そして、その避暑地には避暑シーズンではない時はレタがいつもついてきてくれている。私も最初はお父様やお母様に休暇をとってもらおうと思ったのだけれど、二人とも「休んできなさい」の一点張りだった。きっと私がいなかったらもっと仕事の時間も長くて大変なのだろうと思うと、それ以上我儘を言うのは憚られた。
それに、レタと二人きりで過ごすというのも新鮮で楽しかったので私としては満足している。
使用人もいるとはいえ、私と二人しかいない状況でずっと過ごしていたらこうはならないだろう。