あらすじ
日本国内の、どこかに聳え立つ大きな屋敷。今から二世紀ほど前の、大昔の英国貴族が住まう広大な屋敷の中には一人の主人と六人の使用人の他に探偵が一人、客人として住んでいる。
主人である十八歳のヴィアトリカ・ビンセントの傍らには常に、黒のロングドレスに白色のエプロンドレス、アップにした銀白色の長髪にホワイトブリムと容姿端麗の若き家政婦長(ハウスキーパー)、ロザンナ・ワトソンの姿があった。
今から二年前。ビンセント家の屋敷で、ヴィアトリカが愛する両親が何者かに殺害される事件が発生。犯人が、殺害現場を目撃したヴィアトリカまでも手にかけようとしたその時。黒のトランクを片手に、灰色のロングコートを着たロザンナが、引き抜いたサーベルで以て犯人を撃退した。
ロザンナから、両親を殺害し、ヴィアトリカを襲った犯人が悪魔の化身という、人ならざる者であることを告げ知らされたヴィアトリカは恐怖に全身を震わせた。
「ご安心を。私と契約した暁には、全身全霊をかけてあなたを守ります。命令とあらば必ず遂行する、忠実な召使いとしてあなたに仕えましょう」
片手を胸に添えて凜々しく微笑むロザンナの言葉を信じ、ヴィアトリカはロザンナと契約するのだった。
ミカコは臨時のハウスメイドとして、ヴィアトリカの屋敷に住み込みで働いている。
遡ること十三日前。ミカコ宛てに、一通の手紙が届いた。住所も送り主も不明で、手紙の送り主が何故、ミカコが悪魔封じの出来る神仕いであることを知っているのか、それが謎すぎて不審な気持ちを募らせたが悪魔が絡んでいるとなると見過ごせない。そんな正義感からミカコは手紙に書き記された住所へと向かう。
街の周辺には結界が張られていて、見た目は手つかずの森が広がっているように見えるのだが、結界を通り抜けると今から二世紀ほど前に多く見られた建築物や、英国貴族を乗せた馬車や一般の町民達が通りを往来している。地図にも載っていない、幻の街と化していた。
ある日、ロザンナの言付けで街まで日用品の買い出しに出かけたミカコはその帰り道で悪魔の気配を漂わす、不審な貴族の青年とすれ違う。神仕いとしての使命感に駆られたミカコは青年を追尾、その結果、大切なものを奪われた。
青年に奪われた大切なものを取り返すため、ミカコは仕事の合間を縫って街での聞き込みを開始。その最中に出会った黒のタキシード姿の少年と、探偵のエドガーがミカコに問いかけた「本当はきみが奪われたのはものではなく、人なんじゃないのかい?」の言葉が事態を思わぬ方向へと導くのだった。