あらすじ
千春は難病を抱えていた。余命はあと僅か。ただ、人と比べれば余りにも短いこの人生に後悔は無かった。秋介と出会うことが出来たから。千春の人生は秋介というピースが嵌って初めて完成したのだ。
二人に子供は無かった。その代わり、流行りのAI養子を購入し本物の子供のように可愛がった。子供の名前は春と秋の間を取ってナツと名付けた。
秋介は脳の松果体について研究する脳科学者であった。かつて『我思う、ゆえに我あり』という有名な言葉を残した17世紀のフランスの哲学者ルネ・デカルトは1649年に出版した自身の著書『情念論』の中で松果体を『魂のありか』と呼び、松果体を通じて物質と精神が相互作用をすると説いた。秋介は人間の魂が高次元のハードディスクのような記憶領域に保存されており、松果体はその記憶領域と繋がるアンテナの役目を果たしていることを突き止めた。つまり、人間の体は高次元領域に存在する魂によって遠隔操作されていたことになる。
秋介は密かに千春の魂の接続先を人の体からアンドロイドの体へ変更しようと考えていた。