あらすじ
「ごめん。君は運命の相手じゃないんだ」
私の名前はセイレーン・アドラー。
エトライナー王国の伯爵令嬢として生を受けた。
父に似た夜空色の髪と目をしている。
そして、私の前にいるのはディアモン・ジュノン。ジュノン侯爵家のご子息であり私の婚約者。
現状は。でも、それも今日までのことだろう。
彼は姿形こそ私たちに似ているけど決定的に違うものがある。それは彼の頭に獣の耳がついていることと尻尾があることだ。
彼は狼の獣人だ。
ここエトライナーは人と獣人が共存している。
「運命、ですか?」
「ああ。俺たち獣人には番と呼ばれる者が存在する。出会えるものは極一部」
「聞いたことがあります。でもそれは物語上の話だと」
「ああ。それだけ獣人が番に出会うのは奇跡なんだ。でも存在はする」
「そして、あなたは出会ってしまったと」
「ああ」
「すまない」と言ってディアモンは頭を下げる。
悲し気な顔を隠そうともせずに彼はいる。どうしてあなたがそんな顔をするの?
あなたにそんな資格ないでしょう。
あなたが私をあなたの意志で捨てるんだから。
「この婚約はなかったことにしてくれ」
彼の家は侯爵家。私の家は伯爵家。身分が上の者からの申し出に拒否できる権限はなかった。