あらすじ

婚約者のハインツは、あたしの手を取って言った。
 
「君こそが私の運命だ」
 
 相手はとびきりの美男子だ。たとえば、これが本当に運命なら、私の心も躍っていただろう。拳一つ分くらい浮いていたかもしれない。あ、間違った今は「あたし」だ。
 
 そういう設定にしたのだから、全うしなければ。
 
 でもね、この運命.......っていうのがそもそも勘違いなのよね。運命なら、気づいているはずなのだ。
 
 私が変装したあなたの婚約者だって。

でも彼は私の本当の姿に気づかない。まだ二度しか会っていない名も知らない女だと信じているのだ。
 
「そんな……困ります。だって、ハインツ様には婚約者がいらっしゃるんでしょう?」
 
 しおらしく俯けば、ハインツの手が強くなる。直訳すると、『婚約者がいるのに他の女を口説くなよ』である。しかし、浮かれた男は気づかない。
 
 あたしの正体にも、この直訳にも。
 
「確かに婚約者はいる……だが、あれは親が決めたもので私の意思ではないんだ。私が愛しているのは君だ」
「まだ出会って二度目ではありませんか。それで愛しているなんて言われても」
「時間なんて関係ない。ひと目みた瞬間から君に心を奪われていた。だから、また会いたくてここにいる」
 
 ハインツはそう言って、あたしの顔をのぞき込む。返事をためらっていると、ハインツはあたしを抱きしめた。
 
「お願いだ……私の運命」
 
 変装しているとはいえ、婚約者からは甘い言葉を向けられると同時に、実は愛されていなかったことが判明するとはこれ、いかに。滑稽もここまで極めると、笑いすら起きなくなる。
 
 なんで、こんなことになってしまったの?
 
 私は彼の腕の中、綺麗な青空を見上げる。まるで私をあざ笑うような快晴だった。

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アルファポリス
アルファポリス2023/12/02
  • 現在の作品婚約者の王子が姿が違う私を見初めたので、婚約破棄させていただきます