あらすじ

「はいはーい! 皆さん、こちらにお集まりくださーい! 重大発表がありまーす!」 その声のもとにゾロゾロと集まる白い服の者たち。 ここは病院。彼らが着ているお揃いの服は病衣……ではなく、これはカルトの集会……でもない。 一面、白く柔らかな世界。まるで雲の海。温かな光。そう、ここは天国。神の膝もとで穏やかに暮らす彼らは、天使の呼びかけにこうして従順に集まって来たのだ。 その中に大次郎という男がいる。六人兄妹の次男で、両親と兄を早くに亡くした彼は若いうちから身を粉にして働き、残る妹たちを大学、就職、結婚まで見届け、そして過労により死んだ。 その甲斐あってという言い草も変だが、彼は天国に来ることができ、また人生をやり切ったと満足していた。 今がいつなのか、死んでからどれくらいの時が流れたのかもわからないほど、のんびりとした暮らしを送り、いつか妹たちと会えたら。そして探すには広すぎる上に、焦燥や執着といった感情も削がれるほど穏やかな空間なため、まだ会えずにいる両親や兄といつか出会えたらと、そう思っていた。 尤も、前述の通り、天国は広大かつ、そこで暮らす人数も膨大だ。見渡すとたった今、大次郎が加わった一群の他にもいくつか塊が見える。きっと天使のように空から見下ろすことができたのなら、蟻の群れとでも思っただろう。 まあ、焦ることはない。時間ならいくらでもあるのだ。 そう、大次郎は鼻から息を出した。 「えーっと、今から皆さんの中の何名かに地獄に堕ちていただきます」

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2024/01/06
  • 現在の作品天国は満員