あらすじ
滴る水の音。暗闇の世界に波紋が広がる。
耳を澄ませるとまた一つ、水滴が落ちた音がした。また一つ、また一つ、次いで全身の皮膚が粟立ち、不安感が彼を襲う。
――落ちる。
今、産み落とされようとする胎児。
どこに? この世界に。そうだが違う。水。違う。便器の中だ。いやそれも違う。そこは
――地獄。
そんな夢を見た。
目を覚ました彼は体を起こし、顔を拭う。手が濡れたのは、涙していたからだろうか。
違う。彼が上を見上げると水滴が額に落ち、片目を閉じる。夢裏から抜け出し、徐々に冴えてきた頭。同時に増していく不快感。湿った床に横たわっていたせいで衣服が濡れていた。次いで、焦燥と不安感が込み上げる。
――ここはどこだ?