あらすじ
「それはつまり……悪役令嬢とは、王子の婚約者にふさわしくない性格の持ち主であり、王妃としてふさわしくない女性のことだから──?」
そう私が言うと、カルステッドは深く頷いた。
「あぁ。今でこそ、婚約者を自分で選べる時代になったが、昔は生まれた時から婚約者が決まっていたであろう? そういう結婚相手だ。大なり小なり相手を愛し尊敬し合い慈しむ気持ちは持っているけれど、お互いがお互いよりも立場を優先する婚約者であることがほとんどだったと思う。
つまり、性格の不一致による破局だ。王族や上位貴族はどうしても政治的なしがらみが多いから、それだけは避けたいに違いない」
「それでも王命で決められてしまえば拒否もしにくいものね……。しかも、王家にとって都合の悪い相手は排除されるのでしょう?」
「あぁ。それがどうしたって対処できないのならば仕方がないだろう? だが、今はまだそんな時代ではない。それに、貴族院では『自分の伴侶には自分で相手を選ぶ』という習慣が根付きつつある。ならば、なるべく貴族に有利な婚姻は結ばせず、なるべく自分の望む相手を伴侶とすることが望ましい」
カルステッドは難しい顔でそう説明してくれた。
「ローゼマインはまだ子供だから実感がないだろうが、貴族院の恋物語を読んでいるとわかるだろう? そこに登場する王子達は皆、自分に相応しい相手と恋に落ち、結婚する。当たり前ではあるが、これが本来の貴族の在り方だ」
……あぁ、そういえば何となく覚えてる。確かに好きだった本の中の登場人物は皆、普通に恋愛してたね。
「けれど、ローゼマインが洗礼式から季節二つほどで倒れたという情報を得た時、私達の間に懸念が広がった」
「懸念?」
首を傾げるわたしに、カルステッドは重々しく頷いた。
「あぁ……。貴族社会は基本的に魔力の強さで序列が決まる。そして、ローゼマインはおそらく上位領地と婚姻を結ぶことになるであろうからな」
「え? どうしてですか? わたくしは体が弱いので、健康な子供を産めそうにないからですか?」
魔力量が少ないため、子供を何人も産むのは無理だ。だから、貴族社会ではそれほど重要視されないはずだ。そう説明すると、カルステッドがゆっくりと首を横に振る。
「いや、そうではない」
「では、何故ですか? 健康な子供を産むという点から考えると、階級を落としても良いので後ろ盾となってくださる上位領地の方の方がお相手としては良いと思うのですけれど」
わたしの言葉に、今度はエルヴィーラがゆっくりと首を振った。
「ローゼマイン、それでは貴女を次期アウブに、というお父様のお心を蔑ろにすることになります」
「え?」