あらすじ
夜、その建物の中でポタッ、ポタッと水が滴り落ちる音と足音が響く。
外は雨……ではない。何日か前に降った雨が屋上から下へ下へと染みこんでいるのか、それとも配管から漏れているのか、いや、水道は止められているはずだ。
ここは廃墟。彼の仕事はそこの巡回。
なんだってこの俺がこんな仕事を……。
という心の嘆きは足音に表れることなく、ただ体の内部で繰り返し繰り返し木霊し続けている。
この社会が、実力主義であることはわかっていた。受け入れていた。望んでもいた。
……自分が一番前を走っている時は。だが、今や若い連中に職を、居場所を奪われ……
「ああっ!」
と、彼はとうとう堪えきれず声を上げた。肩に水滴が落ちてきたからだ。
彼は手で払い、そしてその手もまた、ぶんぶん振った。