あらすじ
「あははは、いやー、まったくだよ。とんだ食わせ者だね君は」
「あなたに言われたくはないですよ……」
私の返答に、【大賢者】様はケラケラと愉快に笑った。
彼女は私の目の前で呑気にお茶を飲んでいるが、私が森から戻ってこなかったらどうするつもりだったのだろう? 自分の結界で守る気だったのだろうか? ……まあ、今はそんなことはどうでもいいか。
それより私は彼女に報告しなければならないことがあるのだ。
「……ところで、【大賢者】様」
「ん? なんだい?」
「先ほど『祝福』と仰っていましたが……あれは一体なんですか?」
そう、先程彼女が言っていた『祝福』という魔法。
それが一体どんなものなのか気になったのだ。
私の質問を受けて、【大賢者】様は何かを思い出したように「ああ」と手を打った。
「そうだったね、君にはまだ説明してなかったよ。ごめんね、忘れてた」
((え~……))
まるで反省の色が見えない彼女の態度に、私と【剣聖】は同じことを思った。
「じゃあ、まず君に与えた『祝福』についてだけど……これは『強化魔法』の一種だと思ってくれればいい」
「強化魔法?」
なんだその漫画に出てきそうな名前は。
そんな私の思考を読んだのか、【大賢者】様は苦笑する。
「あ~……まあ、君の世界で言うところの『身体強化』とかそんな感じの魔法だと思ってくれればいいよ。ちょっと違うけど」
「……なるほど」
((ちょっと違うんだ))
【大賢者】様のざっくりな説明に、私と【剣聖】はまたもや同じことを思った。
「で、その『祝福』を受けた君がどんな風に変わったのかというと……まず、魔力が膨大なまでに強化されたね」
「……はい?」
((いやいやいやいや!!?))
「それで身体能力も大幅に向上しているはずだよ。試してごらん?」
((いやいやいやいや!?))
突然の提案に、今度は私と【剣聖】が同じことを思った。
「じゃ、じゃあちょっとやってみますね」
【大賢者】様の言葉に従って、私は『身体強化』の魔法を自分にかけた。
途端、自分の身体がポカポカと温かくなり、身体中に力が漲ってくる感覚に襲われた。
((……これが『祝福』の力?))
私の知る限りにおいて、スキルやアビリティといったものは所持者の身体機能を増幅させる力だ。
しかし【剣聖】が言っていたように、私自身にそれほどの変化は感じられない。
「ね? すごいでしょ?」
「……そうですね」
((いやいやいやいや!?))
【大賢者】様がまるで自分のことのようにドヤ顔しているが、私はそれほど驚きを感じていない。
((もっとこう、劇的に変わるもんかと思ってたんですけど……))
ここまでなんの実感もないと拍子抜けだ。
いやまあ確かに身体の奥底から力が湧いてくるような感覚はあるのだが。