あらすじ
「失礼します」
「来たか」
私からの呼びかけに対して、第一王子であるオルブライトが頷く。私の婚約者であり、このエルガーデン王国の第一王子だ。既に二十三歳という若さでありながら、王族としての風格や貫禄を兼ね備えており、彼こそが次期国王に相応しいと国民からも言われている。
「で、用というのは?」
「もちろん、スピカのことよ」
私たちの間には一人の女性がいた。銀髪の美しい彼女は私たちの可愛い妹だ。ところが、妹の笑顔はどこかぎこちない。それはそうだろう。今この瞬間にも婚約破棄の危機に瀕しているのだから……。
「彼女からの提案ですが、彼女を私の婚約者としてこのエルガーデン王国に迎え入れては頂けないでしょうか」
私がそう言うとオルブライトは考え込むように顎に手を当てた。そうよね、悩むわよね。
「ふむ、なるほど」
「スピカは私などより遥かに優秀な魔術師です。必ずやお役に立てるはずですわ」
私がそう言うとオルブライトは微笑んだ。これはいいぞ! もしかしたらこのまま私の計画通りに……。
「結論から言うと反対だ」
「えっ……」
私は自分の耳を疑った。だが、この第一王子がこの言葉を冗談で言ったわけではないことはすぐに分かった。彼はゆっくりと首を横に振ると、はっきりとした口調でこう告げたのだ。