あらすじ
悪役令嬢の私は、どうやらまた転生したようです。
ここはゲームの世界だった筈。なのに私の立ち位置は悪役令嬢のアリス・レンドーンでは無く、別の人物になっていた。
「変な夢見たなぁ……あいたたた……」
前世の私は享年25歳だった。親孝行もしないでぽっくり死んだのが唯一の心残りだけど、それはもういい。私が今いるのは前世とは違う世界だから。
魔法と剣の世界だと聞いていたけど、今世の私は魔法が全く使えないみたいだった。「アリス、どうしたの? 一人でぼーっとして」
「別に……何でもないわ……」
今の私の名前はアリス・レンドーン。公爵令嬢だ。ゲームの世界では悪役で、最後は王子に断罪され国外追放になる運命だ。だがそれはあくまで前世での私の話である……と私は思っている。そうであって欲しいなと切実に思っている。
今日はこの国の第一王子ルシオン様に婚約破棄される日だったはずだ。正直不安でしかないが…まあなるようになるだろう。
「ねぇアリス、今日は私との婚約式の日だよ? 一緒に教会に行こうね?」
「ええ」
私の友人はアナスタシア・ホーシンという子だ。異世界転生した身としてはこの国の名前に聞き覚えはある。というより日本に住んでいたときは乙女ゲームとしてプレイしていたから当然知っている。
このゲームの名前は『マジカルラバー』だ。名前の通り魔法が題材のゲームであり、プレイヤーが主人公を操作してイケメンと恋愛を楽しむ内容だったはずだ。私も前世では新作が出るたびに買って遊んでいた。
そして今の私は悪役令嬢だ。悪名を轟かせるアリス・レンドーン公爵令嬢なのだ。正直前世でも乙女ゲームを買うような人間だったのは否定しないが、今はそんな事はない。私はアナスタシアが大好きだし、アナスタシアの幸せを心から願っている。
「アリス? どうしたの?」
「何でもないわ…」
私の親友は本当に可愛い。愛嬌のある顔に優しそうな性格をしていて、とても愛らしい…っとアナスタシアの説明はこのくらいでいいだろう。
とにかく私は乙女ゲームをプレイし、悪役令嬢のアリス・レンドーンに転生したらしい。だが……まだそうと決まったわけじゃない。そもそもゲームのストーリーそのものが私の知っているものと全く同じとは限らなかった。
「アリス、そろそろ教会に行こう?」
「そうね…」
今の私は7歳だ。前世では25歳だったから7年で歳を取った事になるが、正直実感がわかない。こんな子供が親に捨てられて生きていけるのだろうか? 「アリス、どうしたの? ずっと上の空だよ?」
「何でもないわ……」
馬車に揺られながら教会の景色を見ていた。これから断罪される身なのに呑気すぎるかもしれないが、少しくらい現実逃避しても神様は許してくれるだろう。教会へつくと入口にいたシスターが驚いたような顔をしていた。これも記憶にある顔だ。