あらすじ

ノンフィクション作家の東丸耕介(ひがしまるこうすけ)は、権威ある文学賞を受けた小説家、則鳥蓮明(のりとりはすあき)の正体が、高校の同級生、加納純一(かのうじゅんいち)だと確信する。プロフィールがベールに包まれる則鳥の作品は、高校生のころ教室で加納に聴かされた、宇宙の神秘に迫る世界観に彩られているからだ。 高校時代の加納は、人が不思議な既視感(デジャヴュ)を覚える理由を突き止めていた。それは、死に際に、生前の軌跡を走馬灯のように順繰りで体感するという精神世界のいわれと深い関係がある。加納の説が正しければ、無限の宇宙や永遠に続く時間というつかみどころのない概念がクリアに解明できる。加納の話は、科学も宗教も哲学も超越している。 東丸は加納に、そのことを書き留め早期に公の場で発表するべきだと迫った。しかし加納は、尻込みする。渋る原因は、東丸にある。 加納は趣味で、小説を書いていた。ところが、東丸が介入したことで、加納は小説の執筆をやめてしまう。意図せず加納から趣味を奪ったことを、東丸は気に病む。そのせいで世紀の発見を世に出せないことを悔やむ。二人の共通の趣味だったはずの読書からも、東丸がよかれと思ってやったことが災いし重大事件の当事者に陥った加納は離れていく。 幾度かつまづきながら東丸は、加納が暗示した通りの進路を歩む。望む職業に就けたのは、加納の存在が大きい。加納と出会わなければ、東丸はまったく別の道に進んでいたはずだ。 出版不況で業界が先細る中、東丸は「書く」仕事にこだわり、なんとか生き延びた。加納のことはずっと気になっていたが、高校卒業以降、会うことも、手紙や電話で連絡を交わすこともできずにいた。 則鳥蓮明と名乗る小説家は、東丸が存在を認識した文学賞受賞のはるか前から同じ筆名で作品を発表していた。それらを読めば読むほど、則鳥イコール加納であることが裏付けられる。東丸は、思い切って則鳥との接触を試みる。 予期せぬ形で、則鳥はアンサーを打ち返してくる。まさしく加納本人だった。加納は秘密を打ち明ける。則鳥蓮明として発表した作品には、常に東丸の影があった。東丸が加納に道筋をつけられたと思うよりずっと大きな影響を、加納は東丸から受けていた。 ペンネームの由来にまつわり、加納は東丸にクイズを課す。手の込んだ、気の利いたおしゃれで素敵なクイズだ。

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小説を読もう2023/11/12
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