あらすじ

沖縄返還の日、沖縄出身の両親のもと東京で生まれた「おれ」は、父親のルーツに由来する沖縄独特の姓に日本の伝統的なダサい名前を与えられ、複雑な思いで幼少期を過ごす。ただ、誕生日のかかわりもあり、沖縄の血を引く者としてのアイデンティティを常に意識した。 望んだわけでもなく沖縄の大学に進むことになり、本土の人間であり沖縄の人間でもあるという呪縛にとらわれる。そして、ことは複雑に展開しだす。雇用需給が買い手市場のマスコミ就職を目指したため、沖縄本島の西三百キロに浮かぶ離島に行かざるを得なくなった。 離島でおれは、ひどいカルチャーショックを受ける。しかも、アルバイトで報道の仕事をかじっていたことが裏目に出て、狭い島の狭い社会しか知らない上司とたびたび衝突する。 理解者もいた。本土出身のベテランカメラマンや地元出身の中堅記者、さらに、まだ少女といって差し支えない同期入社の若い女性だ。 そんなある日、本土で大量殺人事件を起こしたとされるカルト教団幹部を乗せた航空機が、島に着陸するとの報がもたらされる。職場が機能不全に陥る中、地元メディアの記者として、おれはその取材に成功する。ところが、取材がうまくいったにも関わらず、保身にまみれた職場トップによりおれは窮地に追い込まれる。 おれは、沖縄は日本に復帰などしていないと気付く。離島から沖縄本島を、あるいは日本本土を見わたせば、そのことは明白だ。大学時代を過ごした本島にいたのでは分からなかった。 沖縄を語る上で不可欠な太平洋戦争末期の地上戦を、この島は経験していない。米軍基地も島には存在しない。沖縄本島とは文化様相も住民の価値観も異なる。本島と離島との隔たりは、本土と沖縄とのそれよりずっと大きく深い。 自分は島の人間ではなく、沖縄の人間でさえないと悟ったおれは、島を去る決意を固める。報道の仕事を続けることも半ばあきらめる。生粋の本土の人間でもないから、行き先は決まらない。 島を離れようとするおれを後押ししたのは、信頼関係にあったはずの同僚だ。ちょっとした、同僚にとっては大したことのない火遊びに、おれは利用されていた。理解者のはずの面々の心が、ばらばらになっていく。 ジャーナリストとして、島の職場の正規従業員としての仕事の集大成をもくろむおれは、結論を導き出す。おれと同じように宿命をもって名づけられた(略

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小説を読もう2023/10/02
  • 現在の作品五月十五日に生まれて(Born on the Fifteenth of May)