あらすじ
誰も彼もが待ちに待った高校生活を始める中、僕はただ一人、教室の隅で静かに季節を眺めていた。春の入学式、オリエンテーション、部活勧誘、新しい環境においての対人関係。クラスの内外を問わずに、スマホ一つで友人を生み出していく。その輪の中にいない僕は、教科書が友達のような生活を送る。そのまま時は流れ、一学期の終わりを迎え、夏休みになろうとも僕は一人だった。うだる暑さを一人で乗り切り、滞りなく二学期が始まる。クラスの中だけでなく、学校中で夏休みの思い出を語る声を聞いていた。何か憧れがあったわけじゃない、羨んだわけでもない。ただ少しだけ、そちらを見ただけ。
だからだろうか。そんな願いですらないものを叶えようと、僕の前に彼女が現れる。夏の存在も薄れつつある秋の日。いつものように一人の僕の元に、とても暖かな風が訪れる。青く色づくとは欠片も思っていなかった僕の生活が、彼女によって大きく変えられる。僕の最も嫌う季節の名をした彼女───神原 春留に。