あらすじ
「眼鏡のフレームを替えたせいだと思うが……」と仁科はいった。
パソコンのファンとハードディスクの唸る基調低音が十二畳ほどのその部屋を満たしていた。
「見えるんだな、何かが。もちろん何だかはっきりしない、ただの白い布かカーテンみたいなものなんだが、脳の方が勝手にイメージを作り上げてしまう。それで、どうも化け物というか幽霊を見た気分になる」
21インチのディスプレイには詳細な線で描かれた設計図が映っていた。3Dキャドだが、いまは平面図だ。
「で、顔は?」
仁科の脇で別のパソコンにアクセラレータを取り付けていた本間が訊ねた。
「先輩の話からすると、知り合いの女ってことになるんでしょうね、やっぱり」
肩を竦めながら、あらぬ方を向いて本間が続けた。
「美也ちゃんだったら、怖いな……」
いって、ぶるるっと身震いする。
「怪談はいやですよ」
仁科の指がキーボードの上で、わずかの間、止まった。
「美也子も簡単に死んじまったからなぁ」仁科の嘆息。