あらすじ
「エアリーチェはまだ到着しないのか?」
「はい、たった今隣のルバラン区に到着されたとの情報が入ってきております」
「そうか、それじゃあもうすぐここに来れるな。さて、準備は万端か?」
「はい。お備え付けのお部屋に加え、お料理からお洋服まで、すべて一級品の者を取り揃えております。エアリーチェ様がお喜びになられることは間違いないかと」
「よしよし、それなら問題ない…はぁ、到着が待ち遠しくて仕方がない…こんなにも僕が恋焦がれた人物は今までいない…幼馴染でありながら、どうしてこの気持ちに今まで気づかなかったのだろうか…いや、きっとそれは向こうも同じだったのだろう…それゆえにお互いのどちらも距離を詰めることができず、結局昔のままに今に至ってしまった…けれど、そんな歯がゆい日々は今日をもって終わる…!それこそ今日は運命の日となるんだ…!!」
私は扉越しに、自身の婚約者たるトロイバル様とその使用人の会話を耳にしてしまった。…ただ、仮にこの会話を聞いていなかったとしても、これまでの彼のふるまいからこうなることは間違いないだろうとは思っていた。婚約者である私を差し置いて、幼馴染の関係にあるエアリーチェにうつつを抜かしている彼。そんな彼の本当の心がどこにあるかなんて、初めから分かっていたのだから。