あらすじ
泰山府君×代書屋のお嬢様が後宮に隠された謎を解く!? 死者――幽鬼《ゆうき》から依頼された宛先不明の手紙を届けてやりたい。 街外れで代書屋を営む藍夏月《らん/かげつ》は、そんなことを考える変わり者だった。 死者のことばかり考えていた夏月は、ある日、泰廟の框に足を引っかけ十六才の若さで死んでしまった。 「現世の罪の申し開きをするがよい」 冥府の王――泰山府君《たいざんふくん》から死後裁判を受けるも、夏月は神の手伝いをすることで現世に黄泉がえった。 「代書屋の働きぶりに免じて、ひとつ、埋め合わせをしてやろう。おまえの命が危機に遭ったら、三度だけ助けてやる。どうしても進退窮まったときには、泰山府君の名を呼ぶがいい」 後宮にもときおり代書屋の用を請け負う仕事をしていた夏月は、死んだ幽鬼は後宮の妃だったのかもしれないとの情報を得る。 冥府の神から贈られた簪を髪に挿して、彼の助言のとおりに女官勤めをはじめた夏月は、幽鬼の正体を探るうちに、後宮の奥に隠された秘密を知ってしまった。 後宮の真ん中――王族の祖霊廟で死にかけた夏月は、 「泰山府君、どうかお助けください」 と簪の力を使い、泰山府君の黄泉がえりの術で生き返った。 その夜、泰山府君の助言のとおりに店を開くと、また訳ありの客が訪れてくる。 後宮で妃を殺した犯人に殺されかけた夏月は、泰山府君の助けを借りながらも、命からがら助かり、殺された幽鬼の手紙の宛先をようやく知る。 しかし、 ――もしかして、わたしが殺されかけたのは泰山府君の助言のとおりにしているからなのでは……。 そんな疑いを抱いた夏月は、泰山府君に疑問をぶつけるも、 「おまえは幽鬼の手紙を届けてやりたかった。私はおまえを使って現世での捜し物をしたかった。これでお互いの取引は成立しているであろう」 などと死にかけた夏月を前に冥府の王は傲慢に言ってのける。 神様との取引なんてろくなものじゃないと夏月は自分の選択を後悔したのだった。 ――中華風×幽鬼×ミステリー