あらすじ
「エアリス、君との婚約は今日をもって終わりとする」
急に呼び出されたジリアン様の部屋で、彼は冷たくそう言い放った。
「…婚約破棄、ですか?」
「まぁそういうことだ。しかし安心したまえ。君に居場所は残してやろうと思う」
私の返事も一切聞かないまま、勝手に話を進める彼。
「私は寛大だからな。かつて婚約関係にあった君を追放などはしない。ここで職を与えようと思う」
自分が権力者であることを良い事に、彼はそんな事を言う余裕があるのだろう。いつでも追放などできるからゆえの、余裕が。
「使用人として私に仕えたまえ。もちろん新しい婚約者であるエルマの身の回りの世話をするのも仕事に含まれる。構わないな?」
私は少しだけ反論を試みた。
「もし私が出て行くと言ったら、どうされるのですか?」
私の言葉を聞いた彼は、少し顔の端に笑みを浮かべた。
「くすくす…できるのならやってみればいい。けれどどうせ君はここに残りたいと心の底では思っているだろう?私のような魅力的な男はそうはいないからなぁ。死ぬその瞬間まで仕えたいと考えるのが女の本能だろう?」
きっと彼はこれを本気で言っている。私を虐げたり脅したりするつもりなのではなく、ただただ自分のゆがんだ価値観のままにそう話をしているのだと思う。
それなら私は、もう話をすることをやめた。私もまた本能のままに行動しようと思ったから。