あらすじ

しゃらり。 その鈴は、時を飛ぶ絡繰りの音。 しゃらり。 その鈴は、運命の恋を手繰る翼。 主の男は、岸岡時人(きしおかときひと)。齢21。 時人はアルバイト仲間である寺内俊介が持ってきた妙な話にのり、とある小屋へと導かれ、そこで女と出会う。 『飛べ』 女が持っていた鈴に触れた途端、時人の意識は落ちた。目を覚ますと、そこは小屋ではなく狭く暗い押し入れで—— 令和5年から時人が飛ぶは、明治43年の吉原遊廓。だが目を覚ました時人が目にした景色は、想像していた遊郭とは随分様子が違っていた。 『……城?』 幾重にも高く聳える屋根。外壁を彩るは艶やかな襖。青の市松、赤の七宝、黄の青梅波、緑の鱗。その襖に映る人影は、行燈の火が揺らめくと共に重なり合う。 『遠慮はいりんせん』 女が男の手を引く。 『主さん、こっち』 別の女も男を招く。 びいどろの金魚が啼く。 聲にならない聲で啼く。 血肉を削って尚、啼く。 満月に照らされた妖艶に輝くその城で、時人が出会った者たちは皆、こう口を揃える。 『わっちを、助けておくんなんし』

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カクヨム
カクヨム2023/10/04
  • 現在の作品遊郭城の騎士