あらすじ
とある時代のとある皇帝、剋帝姫舜には実しやかなるものが見えていた。 百鬼百邪が蔓延る世界を、日常的に見て小慣れてはいたものの、人の顔にまでそれが浮き出る。 人の顔は黒い靄とそれを喰む蟲達で覆われて表情は殆ど皆無であった。 だがまあ、それは大した問題ではなかった、本当の悩みそれはーー それは、皇帝の妻達の顔は黒い蟲達によって隔たれている事であった。 どれだけそれが美しい女であると言われたところで。 その肢体がいかに艶かしい姿であると言われても。 面と向かって茶を飲みご機嫌取りこそすれ、蟲に埋もれた女など手が出ない。 更には体がずんと重い日があったり、朝起き上がるのに一苦労するほどに疲弊する日まである。 官吏達も、舜の不調を知っているからか、世継ぎ心配こそすれ下手に口にはしなかった。 だがそれも、いつまでもつか。 そんなおり、舜の不調を案じた侍医が一つの手を見つけてきた。 姚家なる禍祓いという一族である。 永くえにしが途絶えていたが、侍医の呼びかけに姚家は応えたという。 仕方なく、舜もまた頼る事にした。 その翌日。現れた白い面を着けた女ーー姚流麗に、舜は心惹かれた。 その女、黒い靄も黒い蟲も何もないのだ。それだけでも十分であったが、面を外した表情に舜は見惚れてしまう。 流麗の力は本物で、一時的に不調は治るも根本を取り除かねばまた不調は戻ると言う。 黒い靄は邪気、黒い蟲は禍というもので、今は皇宮全体に蔓延っている状態が異様だとして警告する。 舜は、実しやかなもの達の仕業と聞いて、思い当たるものがあった。 それこそ、一番の原因。 後宮であった過去の惨事を辿らねばならぬほどであった。