あらすじ
戦争は変わった。
国家間の対立、民族紛争、権力が産んだ歪な貧富の差、イデオロギー、資源戦争、経済戦争……それらが複雑に絡み合った世界情勢は一つの臨界点を突破した。
大国同士の戦争。東と西の全面戦争という形で。
両国家は国内の|PMC《民間軍事会社》に戦争を委託し、PMCは社員に武器を持たせて戦地へと赴かせた。
国家間の戦争は、PMC同士の社運を賭けた代理戦争へとその姿を変え、その後、PMCは利益独占の為に他社に戦争を仕掛け、国内でもPMC同士の戦争に発展し、戦争に勝利したPMCはその利権を拡大していった。
そして、事態は一つ上の段階に上がる。
戦争の拡大を危惧した人権運動活動家がPMCに紛れて戦場のリアルを動画サイトにアップロードしたことで民間に戦争の姿が垂れ流されたが、皮肉にもこの活動を皮切りに戦争系インフルエンサーを生み出した。
戦場に銃とカメラを持ち込み、動画主の視点で見える戦争は、民間には新鮮に映ったのだ。
各大手PMCもその流れに同調し、一つの|不文律《ルール》を作り上げた。
戦死者の根絶である。
火薬の薬量を抑えて弾丸の威力を下げ、弾殻を柔らかなゴム製に、弾頭には当たりどころによっては人間一人を容易く昏倒させる麻酔薬を塗りたくることで健全な戦場を作り上げ、戦争の敷居を更に下げた。
今や戦争はリアルなFPSになり、|兵士《プレイヤー》は年々、その分母を増やしていった。
兵士達は自らの資金でPMCから装備を買い、それらを身に着けて他社の兵士を撃破し、その身包みを剥いで契約しているPMCに売り、その利益で新たな武器や消費した弾薬を買い取り、再び戦場に戻る。
各PMCは、兵士が奪い取ってきた装備や武器を買い取ってメンテナンスし直して他の兵士に売り捌いて利鞘を得る。
各大手PMCは、自らの社内に軍需工場を作り、エンタメ部門の社員にカメラのついたドローンを操作させて戦場をリアル配信し、閲覧者はその戦場の行方に各PMCの株を賭けた。
そして、勝利陣営のPMCの株価の高騰による配当の増額は、民間にも利益を齎す。
戦地にいる者もいない者にも利益を齎すこの戦争経済はすぐに肥大化し、今や地球上の8割が戦地と化した。