あらすじ
「婚約破棄する、ただそれだけだ。ほかに言うべきことはない」
「お兄様、それではお姉様がかわいそうですわ。いくら本当の事だからと言っても、かわいげがなく魅力がないだなんて告げるのは失礼でしてよ?」
「おっと、そうだねエ―フィ。これはすまないことをした。僕は正直なんだよ。君に魅力がないと思えばそのまま正直に告げるし、かわいい妹である彼女に対しては正直にかわいいと言ってしまうんだよ。…文句はないだろう?」
令嬢アルシラに対して、二人は好きなだけ言葉を口にする。彼女が何も言い返さないことを良い事に、いつもこの調子だった。二人にとってアルシラはただの欲望のはけ口でしかないらしく、これまでも毎日のように彼女を攻撃することで二人は絆を深め、快感を感じていた。しかしそれにも空きが来てしまったために、今日このような婚約破棄を彼女に突き付け、最後の味を感じようとしているのだろう。
しかし、この日はいつものようにいかなかった。彼女はこれまで黙っていたあることを、二人に告げた。
「あ、ありえない…ま、まさか…君が公爵家の…ご令嬢…!?」
「そ、そのブレスレット…前からどこの者だろうと思っていましたけれど…まさかそれが公爵家のメダル…!?」
みるみる表情を青くしていく二人。この場において告げられたことは、アルシラの正体が公爵家の令嬢である、という事のみであったものの、二人が言葉を失った理由はそこにはない。…間違いなく今後、公爵家を敵に回して生きていかなければならないといううす暗い未来の前に、青ざめているのだった。