あらすじ
「隕石衝突の日(ジャイアント・インパクト)」 そう呼ばれた日から、世界は雲に覆われた。 明日は来る 誰もが、そう思っていた。 ごくありふれた日常の真後ろで、穏やかな陽に照らされた世界の輪郭を見るように。 風は時の流れに身を任せていた。 時は風の音の中に流れていた。 空は青く、どこまでも広かった。 それはまるで、雨の降る予感さえ、消し去るようで 世界が滅ぶのは、運命だった。 それは、偶然の産物に等しいものだったが、逃れられない「時間」でもあった。 未来。 ——数えきれないほどの膨大な「明日」が、世界にはあった。 けれども、その「時間」は来なかった。 秒速12kmという隕石の落下が、成層圏を越え、地上へと降ってきた。 明日へと流れる「空」を、越えて。 あの日から、決して止むことがない雨が降った。 隕石衝突で大気中に巻き上げられた塵や煤が、巨大な雲になったからだ。 その雲は空を覆い、世界を暗闇に包んだ。 明けることのない夜を、もたらしたのだ。 もう、空を飛ぶ鳥はいない。 翼を広げられる場所はない。 「未来」は、手の届かないところまで消え去った。 ずっと遠く、光さえも追いつけない、距離の果てに。 …けれども「今日」は、まだ残されていた。 それは「明日」に届き得るものではなかったが、“そうなれるかもしれない可能性“を秘めていた。 1995年、——1月。 世界の運命が揺らいだ、あの場所で。