あらすじ

彼の部屋の窓を開けると、そこには、二人の男の子が座っていた。 毎日ベランダで過ごして、おもちゃと小説があれば、ご飯もいらないのだと言う二人。 大学生にしては妙に大人びた彼と、不思議な、二人の男の子。 私と、彼と、二人の男の子は、その出会いをきっかけに、大切なものをもらうことになる――。 ※執筆活動継続のため、広告を表示させていただいております。どうかご容赦ください。 ※賞応募のため、以下の文章はネタバレを含みます。 「衣澄ちゃん、なに見てるの!」 花の鉢と玩具箱で一杯のベランダから、真穂が居間に飛び込んでいく。 「待て」 じたばたする真穂を捕まえ、ソファから引き離す。 「律君、いいのに」 「良くない。真穂、いくら家族でも、携帯を勝手に見てはいけない」 「はぁい……」 「ごめんなさいは」 「ごめんなさぁい……」 「いいよ、真穂君」 「ありがとう、衣澄ちゃあん……」 「あれ、何してるの」 居間に入ってきた朔斗が、俺たちを見て言う。 「写真見てたの。懐かしくって。一緒に見よう」 衣澄さんが、スマートフォンを掲げる。 俺は真穂を膝の上に抱き、朔斗の反対側に、衣澄さんを挟むようにして座る。 「あ、初めて、一緒にごはん食べた時の……」 朔斗が目を細めて見る写真には、大学のベンチで、微笑む衣澄さん。塗り絵の本を抱え、強張った笑みを浮かべる真穂。表情の無い朔斗と俺。朔斗と衣澄さんは今より幼いが、真穂と俺は今と同じ、男の子と少年である。 「私、律君と真穂君、ほんとに食べないのかなって、凄い心配だった……。あと、この塗り絵見てね、真穂君の絵、大好きになって。律君の書くお話も大好きだし……。あれ、律君、この時はまだ書いてなかったっけ?」 「あぁ。この冬に、ワープロもらってからだ」 あれは今も、大切に使っている。 「そっか? あ、こんなのも」 ファミレスの四人席で、顔いっぱいに笑う真穂。穏やかに微笑む朔斗。表情の無い俺。目を泣き腫らした衣澄さん。 「これの前だよね……。朔斗君の所から、真穂君と律君がいなくなっちゃって……」 「衣澄さんの所為ではない」 何度もそう言っているのに。 「うん……。でも、この時のごはん、美味しかったなぁ……」 「誕生日の時に作ってくれたのも、美味しかったよ」 朔斗が、微笑んで言う。 「おいしかったー!」 真穂が、大声で叫ぶ。 真穂も俺も、食べることはできる。俺はあの時、朔斗がきちんと食べているか見るのと、真穂がこぼすのを拭くので忙しかった。 「その写真もあるよ。あ、私、これも好き。おたまじゃくし捕りに行った時の……」 穏やかな時間は続く――

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2022/11/01
  • 現在の作品日陰縁童 ―べらんだわらし―