あらすじ
「ようやく…ようやくここまで来たのだ…したくもない婚約を重ね、繰り返し、そしてようやくこの爵位の証であるバッジを…!」
選ばれた人間しか手にできない金色のバッジを、よだれをたらしそうなほどに恍惚としながら見つめるのは、クアッドと言う男であった。現在はこの爵位をもって、クアッド侯爵となっている。
「…さて、これを手に入れた今となってはもうあの女にはようはないな…」
クアッドは爵位を手に入れるためだけに、かりそめの婚約を行った。その相手は誰でもよかったのだが、抵抗力の弱そうなルリナと言う女性を無理やりに婚約者に選んでここへと連れてきた。爵位を得るためには愛の証が必要であり、侯爵はそれを偽ったのだった。
「爵位を得られた今となっては、もはや関係などどうでもいい。爵位を維持する条件には、愛の証など含まれていないのだから…!」
これからはこの爵位を振りかざし、一帯とそこに住む人々を自分の意のままに操ることができる。彼はそれが楽しみでたまらないのだった。
――――
「婚約破棄、ですか…?」
無理やりに仕組まれた婚約。爵位を得られれば君も幸福になれると言われていたのに、結局はそれさえ得られればどうでもいいらしい。気づいてはいたけれど、いざこうして現実を見るとどこか冷めた思いになってしまう。
「ああ、そうだ。一応言っておくが、これは爵位どうこうの話じゃないからな。あくまで君が私の婚約相手に相応しいのかどうか、今一度改めて考えた結果、ふさわしくないと判断しただけだ。勘違いはしないでくれよ?」
あくまでも自分の正当性を言って仕方がない侯爵。
「そうですか…残念です。私もあなたが侯爵として活躍するところを見たかったのですが…」