あらすじ
「婚約関係を解消する。しかし安心したまえ。私は優しいのだ。君には今後、使用人としてここにいてもらう事に決めた。追い出されてしまっては君も行くところが無いだろうからな。感謝したまえ」
なんの悪びれるような様子もなく、平気でそんな言葉を吐くこの人物こそ、私の婚約者であるバリンス様だ。…まぁ婚約者と言うと聞こえはいいけれど、実際には半ば無理やり組まされた関係であった…
「…確認ですが、婚約破棄をされるのですね?」
…私の聞き間違いだったかもしれないので、一応念のために彼に確認をとる。
「…なんだ?私と婚約関係を解消するのは困るか?…まぁ気持ちは分かるとも。せっかく私のような男に出会えたんだものな。そうやすやすと諦めがつかない気持ちは理解できる。…しかし残念だが、もう決めたことなのだ。君との婚約は正式に破棄し、私は新しい婚約者を立てることとしたのだ」
「そうですか」
その確認さえとれたのなら、私からもうこれ以上話すことは何もない。
「それではもう私は必要ないようですので、ここを出ていくことにいたします。そちらも文句はありませんよね?」
「っ!?」
…私の言葉が意外だったのか、目に見えて動揺した表情を浮かべる彼。
「…つ、強がりを言ってもむだだぞ?ここを出て行ってどうするというのだ?お前に行くあてなどないのであろう?…無駄な抵抗はよして、素直に私のいう事に従っておいた方が身のためだと思うぞ?」
あくまでその立場を譲りたくない様子の彼。しかし彼が何と言おうとも、もう私はここに用はないのだ。
「…それでは失礼しようと思います。これまでありがとうございました」