あらすじ
「やれやれ…あれだけ言ったのにまだ理解できないようだな。それじゃあ改めて言ってやる。お前はもう私と婚約する決まりなんだ。お前がどう思おうと、私の婚約者と言うこれほどまでに名誉のある立場を降りたりしないだろ?」
「そ、それはあなたが一方的に」
「お前の意思などどうでもいいと言っているのが聞こえなかったのか?お前は私に言われる通りに動けばそれでいい」
高圧的な態度で言葉を発するのは、私を強引に婚約者としてこの貴族家に連れてきたケストーレ卿だ。彼は非常にプライドが高く、女に何か言われることをこの世で最も毛嫌いしている様子さえ感じられる。ただただ立場を固めるだけの、形だけの婚約。こんなものがこの先続くわけはないという事を、全く気付いてもいない様子だ。
「…まぁそんなに私に口答えをしたいのなら、死んでみればどうだ?そうだそれならいいんじゃないか。死んでしまえばもう私に何を言われることもなくなるぞ?なぜなら死んでしまっているのだからな」
「…」
あくまで私との口論に引きを取りたくないからか、こんな挑発的なことまで口にし始める。…けれど、どこか私はこの挑発に乗ってしまえと思った。そうすればこの境遇、なにか変化をもたらすことができるのではないかと思ったから。
「分かりました。言われる通りに死んであげます。それでいいのですね?」