あらすじ
「ふざけるな!そんな醜い顔をした女なんかと婚約ができるものかっ!!!」
事前に手紙でやり取りをしていた時はあんなにも紳士的だったというのに、会うや否やこれだ。…少しだけ期待していた自分が本当に情けない。
この男は伯爵位貴族の息子であるアトラス。私の友人と彼の友人に共通の知り合いがいて、それがきっかけで手紙のやり取りを始めたのが数週間ほど前。彼は何度も手紙の中で会いたい、愛し合いたい、結ばれたいと言ってくれていて、それはもう本当に情熱的だった。…けれど私は、会ったこともない女性にそれだけの言葉をかけられる男性が本当に信用できるものか、決めかねていたのだった。そこで私が考えたのが、この方法だった。
「…君の友人からは細身な体型だと言われて期待していたのに、全然じゃないか…顔にしたって、こんなに醜い女は見たことがない…」
本人を前にして、よくもまあそれだけの事が言えるものだ。私は結婚に憧れがあったのでそれが破談となるのは悲しいけれど、それ以上にこんな男と結ばれそうだったのかと考えると体が震え上がる。
「…もう帰ってくれ…手紙のやり取りももう終わりだ…ああ、まさかこんな女だったなんて…」
手紙は頑張って女女しい文字で書いていたから、なおさら彼を期待させてしまったらしい。私の文字が男心に刺さることを知れて、私は少しうれしくなった。