あらすじ

「わざわざ来てくれてありがとう、エルシャータ」

 大好きなその甘い声で言われるだけで、ここまで来るのに要した疲れなどはすべて吹き飛ぶ。幼馴染である君との食事がこんなにも待ち遠しく感じられるとは思わなかった。

「当然の事だよ。それよりもスフィア、どうして今日は僕を呼んだんだい?なにか特別な話があると聞いてきたけれど…」

 なんとか冷静に振る舞うよう努力をする。内心では彼女から愛の告白を受けることは間違いないと思っていても、それを前面に出してしまっては子供だ。ここはあくまでも、静かな紳士を振る舞わなくてはならない。

「そうそう、その話をしたかったの。婚約の話についてね」

 婚約、彼女の口からその単語が出た途端に心臓が高鳴り暴走しそうになる。けれどそれを何とかこらえて、彼女の言葉に対して返事をする。

「こ、婚約って…ど、どういうこと??」

 さあ、目的にしてきたゴールの時間は間もなくすぐだ。このために現婚約者のミレーナをはじめ、いろいろな人を踏み台にして利用してきたんだ。彼女が婚約の話さえ出してくれれば、それを理由にもう彼女との関係は終わりにすることができる。この時をどれほど待ち望んだことか。

――1か月前――

「そう、彼は裏でそんなことを…」

 ある小さな部屋の中で、二人の女性が会話をしている。一方はエルシャータと幼馴染の関係にあるスフィア、そしてもう一人は…エルシャータの婚約者であるミレーナだ。

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