あらすじ
復讐の咆哮
遠藤さくら(著)
空気は熱く、重く圧し掛かる。
私は熱帯魚のように回遊するばかりだった。
成長しても、生き恥をさらす人生。
そこに人生哲学はない。
あるのは、意気消沈するものたちの、贖いだけだった。
主人のお母様はとても厳しい方だった。
やれ、女性なのに喉仏が大きすぎる。
顔が小さい割には、機転が利かない。
根性がない。女性なのに、お料理が下手くそ。
口を開けば 愚痴ばかりの人でした。
そう、そうね・・・。
だから、今回の事故は、私にとって幸いだった。
あの人から、私は楽になれたのですもの・・・。
地獄のような日々。
熱風が吹き荒れるようなそんな希望のない日々。
私は女を捨てた。それがどれほどの苦痛だったか。
あの人にはわからないのですわ。
私にとって人生とはなんなのでしょうね。
流れ着く、漂流しつづけたカヌー。
身も体もボロボロになり、気がつけば40代。
生きることへの喜びよりも 子供を早く作らなければならない負い目。
あなたにおわかりかしら・・・
専業主婦としていき、専業主婦として死んでゆく。
当たり前の毎日。当たり前の平和。
私はそれに飽き飽きしていたのです。
私にはやりたいことがたくさんありました。
でも、あの人は許してはくださらなかった。
きっと罰が当たったんですわ。
今日は記念日。あなたと私が出会えたこともすべては、幸福。
あの人に、もう我侭は言われない。
蛇のように、用心深くなくても構わない。
私は、やっとの思いで自由になれたのですわ。
おほほほほほっ。あの女のひかれる姿、あなたにも見せたかったわ。
頭蓋骨陥没。意識は二度と戻らない。ガラクタ人形と化したお母様。
あなたは本当に、義理の母として優秀でした。
いまはゆっくりとお休みください。
私の言葉が聞けたとしても、あなたは語れない。
話せない。私は自由・・・。あなたに束縛はされません。
ああ、なんて素晴らしいのかしらね。
これからは好きなように生きるわ。あなたにそれを止める手立てはない。
私は病棟を出る際に酸素ボンベの電源を切った。
看護師だったのだ。安楽死もいいものですわよ。
酸素は停止し、息ができずに苦しむあなたの顔。
滑稽ですわ・・・。