あらすじ
―これは僕こと虎口(とらぐち)が、ハート・スナッチャーになり損なう物語。 僕には盟友が居る。藤山葵(ふじやま・あおい)だ。 僕たちは病院の院内学級で出会った。 僕と葵は。お互いに臓器に異常を抱えていた。僕が肝臓で。葵は肺。 だが。僕の病は科学の発展により、解消されてしまう。肝臓の機能を補う薬が出来てしまって。 僕は死にゆく病人から、ただの高校生に成り下がる。 これで。僕は葵と同じ土俵に立てなくなってしまった。 その上。 僕には食欲に混じって。心臓を食べたいという欲求も出てきてしまった。 僕には分かる。心臓を喰らってしまえば。永久の命が得られる事を。 だが。 僕はそうしたいという欲求を押さえつける。 何故なら。葵とせめて死というラインで同質な存在で居たいからだ。 日々は残酷にも過ぎていき。 葵は日に日に弱る。 僕は間に合わない事が分かりながらも薬学を修める。 彼女の病気を直す薬を創りたいのだ。 だが。その夢は叶う事はないだろう。 創薬には多大なカネと時間が掛かる。 僕は彼女の死を見守る事しか出来ない。 僕は日々欲求と戦っている。 心臓を喰らってしまいたいという欲求と。 僕は葵の存在だけで。ギリギリ耐えている。 なんとかハート・スナッチャーにならずに済んでいる。 だが。彼女の死は規定された未来だ。 僕が彼女を失った時。僕は…