あらすじ
「私たちは、婚約者ではなかったのですね…これまでかけてくださった愛の言葉も、すべては嘘だったのですね」
「そ、それは…そ、その…僕はただ、正直に生きたいだけなんだ。僕の心を動かした女性が君以外にいて、その人がたまたま君の親友だったというだけで…けれど僕は、僕自身にも君にも嘘をつきたくないんだ。だからこうして、すべを君に正直に」
「正直って…私との関係を破棄して、彼女と結ばれることがあなたの目的なのでしょう?その目的のための手段として、こんな言葉をかけてきたのでしょう?正直に生きるだなんてただの名目で、その本心は欲望にまみれたただの動物じゃないですか…」
「…よし、分かった。君には本当のことを言おうと思う。僕たちの間には、ただの愛とは言い切れない、真実の愛と言うものがあるんだ。僕たちはお互いに、確かにそれを自覚した。そしてその気持ちに反することは、この世の真理に反するに等しい。だからこそ、こうして君に」
もういいです、と告げて令嬢は彼の前から姿を消した。何か思うところが彼にはあった様子だったが、この状況にあってはそんな思いは実るはずもなく、無に帰すのみであった。