あらすじ
羽綺の母は、十八歳のときに神隠しにあった。 そして、美羽を生んだ。 崚国の名門・楊家に生まれた羽綺だったが、出自のせいで、誰もが羽綺を気味悪がり、いつも遠巻きにされていた。楊家の一族とも、使用人たちとも、ほとんど口をきくこともなく過ごしている。 そんな羽綺の楽しみは〈書〉と〈午睡〉だ。 筆をとり、字を書いているときは無心でいられる。 夢の世界でなら、どこへだって行ける、好きなことが出来る。 さて、ある日、羽綺に唐突な縁談が舞い込んだ。 「相手は皇帝の末の弟であり、夜王の号を賜った人」 「今夜、夜王府から迎えが来る」 わけもわからず夜王府に嫁ぐことになった羽綺だったが、夜王府に到着すると、どうやら夜王は羽綺に会うつもりがないらしく、姿を見せない。 かわりに現れたのは、黒と青の斑の毛並みをした、三本の優美な尾を持つ、ひとつ眼の魔物で――……?