あらすじ

執筆当時のメモより。 「愛に生きる人生があるのなら、憎しみに生きる人生があってもいい。それを肯定的に描くとすると、どうなるだろうか、と考えつつ、書きました」。 もう十数年前になりますが、本作を講評してくださった、とある作家先生曰く、「技術的なことはいくつか言えるけれども、倫理的にどうなのか、ということについては、私からはちょっとコメントできません」。 咎め立てしていたわけではなく、どう批評したものか、本当に困ってらっしゃるようでした。たぶん、こういうスタンスの物語って前例がなかったのでしょう。 一応、中身はベタな復讐譚です。ただ、因果応報とか勧善懲悪とか、そんなまとまりのいい話ではありません。もしかすると、道徳観念とか人の道とかの限界に挑戦してるかも知れないんで、最近精神の均衡があまりとれてないかも、みたいな自覚のある方にはお勧めしません。って言うか「湾多は一応良識人だろ?」とか思ってくれてる方は、多分これでひっくり返ると思うんで――そう聞いてなお、おお、おもしれえじゃねえか、なんて言える、ちょっと壊れた方以外は、素通り推奨します。 という事前警告はやりましたんで、以下は本音入りますが。 そもそも世の中の復讐物語は、プロ作品・有名作品も含めて、ぬるい。ぬるすぎる。 たとえば何十年も途端の苦しみを味わわされた相手を、ただばさっと暗殺して終わり、とか。 村中が酷い目に遭わされた、その元凶であるラスボスを、せいぜい数日追いかけ回し、数分戦って斬り伏せただけで満足してしまう、とか。 違うだろう、君たちっと湾多は叫びたかった。十年苦しんだのなら、十年苦しませねば。百人殺されたのなら、百人分の命の重みを実感させねば。 というわけで「犬憑き」です。この短編は、本物の「仕返し」ってこういうもんじゃないのかな、と考えつつ、湾多のダークな胸中の澱を、その思いの丈をキーボードにぶつけて書き上げたものです。――とは言え、ただ「復讐に生きる」とか言っても、ここまでエネルギー注ぐのは大変だなと思いますね。ただ、それを否定的に書いてしまったら何かが違うとも思ったので、書くところまで書いてみましたが。 なんにしろ、フィクションの中でだからこそあーだこーだ言えるわけで、その点は湾多もちゃんとわきまえてますと念押ししておきます 笑。

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カクヨム
カクヨム2023/03/19
  • 現在の作品犬憑き