あらすじ
彼はわたしのものです!すると女はいった。馬鹿女がと・・・。
遠藤さくら(著)
プロローグ
ひとつのトマトを輪切りにして、四等分に切り裂き、それでも足りないからと更に潰しながら切るのに似ている。わたしはそう思った。まな板の上にぐしゃぐしゃになったトマトが乗っている。トマトから出た果汁はまな板を伝わりやがてポタポタと音を立ててキッチンの床をよごすのだ。それを何もしないでただ突っ立ってみている女。それがわたしであった。
主婦たちの騒音が耳鳴りのように聞こえる。遠藤さんの旦那さん浮気したんだって・・・。それでね・・・。うるさい。やかましい。だまって、お願いだから。気付くと泣き腫らしていた。メンタルが弱いのだろう。直ぐ泣く女。その姿は女々しく、どこかギゼンぽくて、男を捕って食いそうな顔。どんな顔だよ!と冗談ぽく返していた学生生活が懐かしい。わたしは正に、そのどん底にいるようだった。