あらすじ
結末までのあらすじ(ネタバレあり) 突如人間が精神混濁状態になり、廃人のようになる未知の病が流行し、世界的な問題になっている世の中で、主人公の老人は定年退職後、様々な年代のネットの友人たちとゲームをして日々を過ごしていた。 しかしある朝何者かの手によって無機質な空間に拉致され、椅子に固定され半ば強制的にあるゲームに参加させられる。それは彼が幼少の頃に行ったベトナムをまるで過去に戻ったかのようにリアルに回想し、その中で登場する日本人の中から、声の主である未知の病の流行の原因となる人物を特定するという内容であった。 回想のチャンスは五回、そして最終的には一人の人物を選んで過去から存在を消去し、未知の病の流行していない未来へ改変することが目的となる。一方で未知の病は加速度的に蔓延し、全人類を飲み込もうとしていた。そして声の主は彼に時間が残されていないことを強調する。 主人公は人の命(人生の歴史)を奪うことと、人類の存続に関わる重すぎる責任と自分の置かれた逃走不可能な状況の中で戸惑い疲れ果てながらも、無数に存在する回想のシーンから一つづつ選び、過去を追体験する。そこでは様々な善良な人々との出会いが回想された。 最後の回想のあとに、彼は一瞬の意識の途絶の後感じた。すると自分の今まで様々な感情や考えで混乱していた思考が並列的に処理されていることに気づく。自分でも理解できない処理速度の末に、一つの回想に行き当たった。そこで登場した人物、それこそが声の主であると結論づけた。 そして声の主は消去が実行されたことを告げた。彼は誰が消去されたか思い出すことができず、声の主がまだ存在している事によってゲームに負けたことを理解する。 彼女は回想の中で登場していた現地民と思われた少女だった。その姿は菌類が頭を覆って醜く不気味だった。彼は彼女に疑問を投げかけようとしたが、不思議とその疑問の答えを既に知っていた。彼女に寄生している菌類は人類を集合精神に統合する働きを担っていた。ただ彼女は強い渇望と怒りによってそれに抗い、自我を保っていた。彼女は集合精神にリンクした人間たちの頭脳を演算に使って超頭脳を得た人物であった。 しかし今、彼の精神を含めた全人類の精神が濁流のように押し寄せ、彼女の精神を吹き消けそうとしていた。そこに彼は悲しみを見出し、彼女に友達になろうと呼びかける。感情は茫漠たる精神の砂漠に一筋の水滴を垂らし、やがて精神は統合された。