あらすじ
わたし、野々宮光。 幼馴染の雪ちゃん――相良雪斗くんのことが大・大・大好きな中学一年生! 今日は、そんな彼との記念すべき初デート♪ ウキウキのルンルンで向かったんだけど……あろうことか、その待ちあわせのときに、雪ちゃんが交通事故に遭っちゃったんだ。 もうなにもかもが終わりだ……と呆然自失になっていたところで、神さまがあらわれた! 「キミが望まないこんな世界は、巻き戻して、なかったことにしようよ。このサイアクな未来を、消してしまうんだ。ねえ、一途ちゃん。キミは、いつに戻りたい?」 これは、一途すぎる女の子が、大好きな幼馴染を守るためにタイムリープして、今度は彼に嫌われるために頑張る物語。 ※カドカワ読書タイム短編児童書コンテスト応募用作品です。 ※ネタバレ注意 『キャラクター設定』 野々宮 光(ののみや ひかり) 中学一年生の女の子。性格は、明るくて、素直で、猪突猛進。勉強と、嘘が苦手。幼馴染の相良雪斗のことが大・大・大好きな超一途系女子。その一途ぶりは、人間不信になりかけていた雪斗のために、毎週末、星灯神社に通ってお祈りするほど。その甲斐があって、星灯神社の神さまに気に入られ、雪斗を救うためにタイムリープをすることになる。 相良 雪斗(さがらゆきと) 中学一年生の男の子。昔はよく美少女に見間違えられていた、中性的なイケメン男子。光の幼馴染。性格は、クールで、とても不器用。雪斗が小学三年生のころに、雪斗の母は、他の男の人を好きになって家を出て行ってしまった。それが心の傷となり、恋に対して臆病になっている面がある。なかなか素直になれないが、内心では、死ぬほど光のことが好き。 相良 春(さがら はる) 高校一年生の女の子。雪斗の三つ上の姉で、黒髪ストレートヘアが似合う美少女。光のもう一人の幼馴染。サバサバとした性格で、特に雪斗に対しては、容赦なく毒舌。恋に対して不器用すぎる雪斗に呆れながらも、二人の恋を応援している。 『長編化した際のプロット』 起 中学一年生の野々宮光は、幼馴染の相良雪斗が大・大・大好きな女の子。今日は、雪斗と付き合って、初めてのデートの日だ。光は浮かれ気分で待ち合わせ場所に向かったが、その途中で青信号を無視した赤い車に轢かれそうになり、雪斗に助けられる。雪斗は、光をかばって意識不明の重体となってしまった。ひどいショックを受けて気を失った光は、不思議な夢を見る。いつもお参りしている星灯神社の神を名乗る男の子に、「一途ちゃん」というヘンなあだ名で話しかけられる夢だ。神さまは、光が雪斗の幸せを熱心にお祈りにくる様子を見ていたと言い、そんな光の願いを叶えたいと言う。「一途ちゃんが望まないこんな世界は、巻き戻して、なかったことにしようよ。このサイアクな未来を消してしまうんだ」と神さまからタイムリープを提案された光は、一か月前の中学校の入学式に戻りたいとお願いする。神さまの力で、一か月前の入学式に戻ることができた光は、今度こそ雪斗を守ると決意した。やりなおす前の世界で、雪斗は、光をかばって交通事故に遭った。未来を変えるために、光は雪斗への告白をなかったことして、これからは一緒に帰るのをやめようと雪斗に伝える。 承 一方の雪斗は、そんな光の態度に、内心でめちゃくちゃショックを受ける。毎日、惜しみなく好意を伝えてくる光に対してついそっけない態度を取ってしまうが、実は雪斗も、甘々な結婚生活を妄想するほど光のことが大好きなのだ。しかし、雪斗は、両想いになってもいつか壊れるかもしれないという恐怖を完全に拭えず、光に対して素直になりきれずにいる。雪斗の家には、母がいない。雪斗の母は、父以外の男の人を好きになり、雪斗が小学三年生のころに離婚して家を出ていってしまった。そのことが心の傷となり、雪斗は恋愛なんてバカらしいと思うようになった。そんな雪斗を救ったのが、幼馴染の光だ。小学五年生のころ、初めてもらったラブレターも破り捨ててしまうほどやさぐれた雪斗を見た光は、週末になると神社に通いはじめた。不思議に思って尾行すると、光は「雪ちゃんが、今日も一日幸せでありますように」と、声に出して熱心に祈っていた。それまでも大切な幼馴染だったけど、週末になるたびにお参りにいく光の姿に、雪斗は恋心を自覚した。 光は、最悪な未来を変えるために、オリエンテーションの班決め・選択授業等の学校イベントでも徹底して雪斗を避ける。最初は、光をつなぎとめようとして必死だった雪斗もだんだん弱気になっていき、「なんで……? オレ、なにか嫌われるようなことした?」と光に迫る。光は、そんな雪斗に断腸の思いで、「他に好きな人ができたんだよ」とウソをつく。雪斗を拒絶した帰り道、光が泣きながら星灯神社に向かうと、神さまが再び頭の中に話しかけてきた。神さまは「大好きな雪ちゃんのために必死で頑張っているねぇ、一途ちゃん。だけど……これで本当に、未来は変えられたのかな」と不吉な一言を残していく。 転 やりなおした世界で、光にとっては二度目のゴールデンウィーク初日を迎える。今回の雪斗は、光と付き合わなかったので、雪斗が光をかばって交通事故に遭うという最悪な未来も変えられたはずだ。そのはずなのに、外出していく雪斗が見えた瞬間、光はなぜだか嫌な胸騒ぎがした。こっそりと雪斗の後をつけていくと、横断歩道を渡っていた最中で、雪斗は再びあの赤い車に轢かれてしまう。また雪斗が救急車で運ばれていくことになりパニックになった光だが、その車に見覚えがあることに気がついて、心臓が早鐘を打った。(この事故は、わたしが雪ちゃんと付き合ったから起こったんじゃない。あの赤い車を運転している人が全てのカギを握っている!)そう気がついた光は、赤い車のもとへ走っていき、運転手の顔を見てさらなる衝撃を受けた。その運転手が、大人の姿になった雪斗だったからだ。混乱する光に、大人雪斗は「オレは、オレを交通事故からかばったせいで光が死んだ未来からやってきた、相良雪斗だ。社会人二年目になり、もうじきプロポーズしようと考えていたデートの最中で、光は、オレをかばってあっけなく死んだ」と淡々と語った。 光の葬式の帰り道で、大人雪斗は、星灯神社に光を返してほしいと祈ったのだという。すると神さまがあらわれて、不思議な助言をした。「キミを、時空の流れから外れた存在にして、過去へと戻そう。同じ時空に二人の人間が存在すると、世界に負荷がかかるから、滞在できる時間はそう長くない。いいかい? 望む未来を手に入れるために、今の命を懸けて、過去の自分を殺すんだ」 結 大人雪斗は、「最初は、過去の自分を殺すために、時をさかのぼるなんてどんなバカげた話だろうと思ったよ。でも……オレ、死ぬほど後悔したんだ。キミの想いを信じきれずに、プロポーズを迷ってしまったこと。たとえ想いあって結婚したとしても、いつか、母さんみたいにオレを置いて家を出て行くんじゃないかって。光は……いつも、あんなに一生懸命だったのに。そんな過去のクソッタレなオレは、殺されて当然だろ」と泣き笑いしながら消えていった。 大人雪斗の話を聞き終えた光は、もう一度、星灯神社に向かう。すると神さまは、全て承知の上だった。「雪ちゃんには、タイムリープの適性がなかったんだ。大人になった一途ちゃんが交通事故で死んだとき、雪ちゃんのために時を巻きもどしたとしても、彼は一途ちゃんと同じように記憶を持ちこすことができないとわかってた。ボクは、一途ちゃんならばここまでたどりつけると見越したうえで、彼に自分を殺すよう助言したんだよ」と語った。 光は、神さまに、もう一度タイムリープをさせてもらう。光にとって、三度目の中学の入学式の帰り道で、光は雪斗に、自分の身に今まで起きたことを全て話した。はじめは驚いていた雪斗も、「光を信じる」と頷いてくれた。そして、二人で迎えた、三度目のゴールデンウィーク初日。今度は外出せず、光の家で二人一緒に緊張しながら過ごしていると、どこからともなく大人雪斗が出現した。雪斗を襲ってこようとした大人雪斗に、雪斗は必死に抵抗しながら、「オレは、お前とは違うっ。光の全てを信じるって決めた。もう、想いを伝えるのに迷ったりもしない。お前と同じ未来はたどらない!!」と叫んだ。すると大人雪斗は泣き笑いをしながら、「……そうか。お前は、オレとは違うんだな」と安心したように微笑んで、消えていく。雪斗は光を抱きしめながら、将来結婚する前提で付きあってほしい、と光へ素直に想いを告げる【完】