あらすじ
清々しい空気が辺りを包み込んでいる早春の朝。まだ7時前のこの時間は、熱いコーヒーとこんがり焼けたトーストの朝食と共に、ラジオでニュースを聞くのが朝の日課だ。テレビは情報量が多くて、無駄も多い。だからラジオが最適だと思っている。 『ビー、ガガガー』 だが今朝のラジオは何か様子がおかしかった。ビー、ガーというノイズが聴こえるばかりで、お調子者のキャスターの声が全く流れてこないのだ。もしかして昨日部屋の掃除をした時にラジオを落としたんで壊してしまったのだろうか? いや、落とした後に確認したときは聞こえていたはずだ。 あーでもないこうでもないと、しばらくいじくりまわしてみる。すると、やっと人間の声らしきものが聴こえて来た。 『ビー、ギャー!!! ゾンビ……ガーガガガ』 「……きたか」 人口15,000人の中規模な町、K町に住む青年【金芝】は、生まれた時から特殊な能力を持っていた。金芝がその能力に気付いたのは7歳の時。とあるネズミの会社のアニメ映画に出てくるお姫様のまねをして氷を出そうとしたら、本当に出てしまったという何ともふざけたシチュエーションでの事だった。 当時子供だった彼は、最初は当然のように親や友達に離そうと思った。だが、彼の中にあった何かが少年を踏みとどまらせることになる。それは、直近で彼が見たネズミの会社の映画の影響だったのかもしれない。とにかく彼は誰にも能力の事を話さなかった、友達にも、もちろん両親にも。そして……。 「ゾンビが出たから、俺の町を壁で覆いましょうかね~」 20歳になった今、彼の能力は町をスッポリ覆うほどの氷の壁を、瞬時に作り出せてしまうほどに進化していた。