あらすじ
「ああ、やばいやばい……」
「おにがくるおにがくる……」
「ああ、あ、あ、ない、ない……」
スーパーに入った瞬間に、青い顔して呟くスーツを着た連中を
目の当たりにした俺はここもか、と圧し掛かる絶望に背を曲げた。
せめて連中の惨めな姿をへへへ、と笑ってやろうとしたのだがやめた。
俺も連中と同じような顔をしていることを店内にある鏡が見せつけて来たのだ。
青白い顔。乾燥した唇。半開きの口の中は乾いている。手足が震え、脇が湿っている。
おまけにトイレを我慢して店をハシゴしていたから漏らしそうであった。
ため息を吐くと、一瞬だが臭った。
俺はこの自分の息が武器にならないかと思いついたが
しょうもないアイディアすぎて呆れ笑いさえ出ない。
そして相手の息の方が絶対に臭い。
去年、嗅いだ匂いがふと頭によぎり、映像が、恐怖がフラッシュバックした。
鬼。
鬼が来る。作り物じゃない、本物の鬼だ。