あらすじ
心に孤独を抱えながら、会社員として日々を過ごす「私」には、内に秘めた願望があった。それは、女の体となり快楽の奔流に溺れることであった。 ある日、「私」は風変りな女医、夏木医師と出会い、彼女の誘いにより自らの心の深淵にある夢の世界を訪れ、一人の美しい女と出会う。女の名は麻里子。彼女はこの夢の世界の主であり、彼の夢を叶えるために現れたという。また、麻里子の魔法により、この世界では彼女と寸分違わぬ姿となっていた。「私」は夢の世界で彼女との逢瀬を重ね、その愛欲を一身に受けながら次第に彼女に心惹かれるようになる。そして、麻里子も「私」を永遠に我が物とするためにこの世界に閉じ込めようとする。しかし、彼は彼女の思いを戸惑いの中で拒絶し、彼女を失ってしまう。 その後、夏木医師の予言を受けて「私」は麻里子を取り戻す「冒険の旅」に出ることになる。「私」は突然、夏木医師の娘とともに謎の研究機関の工作員たちに拉致され、山中の秘密の施設に囚われてしまう。そして、夏木医師のかつての同僚、金崎博士の案内により、研究機関の首領である神を自称する老人と対峙する。老人はこの『世界』の創造主であり、「私」と麻里子は新たな世界を創造してこの『世界』を消滅させる「危険な不適合者」であるという。彼はこの『世界』の秩序維持のため、「私」を抹殺するつもりであった。しかし、「私」は思いがけない助けにより九死に一生を得る。老人は「麻里子と二度と会わない」ことを条件に「私」を釈放した。もし会えば、協力者である夏木医師をも殺害するとの脅しの前に、「私」は麻里子を取り戻すことをあきらめざるを得なかった。 麻里子を自らの意思で再び失おうとしていた「私」は、誰かの声に導かれるように、とあるアンティークショップを訪ねる。そこで出会ったのは麻里子の部屋の片隅に佇んでいたはずのテディ―ベアだった。 ここで「私」はあることを確信する。それは、麻里子は私自身―すなわち、幼い日に引き裂かれた「私」の一部―であるということだった。そして、「私」はどんな犠牲を払っても彼女を取り戻すことを決意する。たとえ、この『世界』が滅んでも。私の愛する者たちをすべて失っても。