あらすじ
【あらすじ】 私学文系の雄と評される一方、多彩なサークルの存在することで知られる九隅大学。浪人の末にこの大学の学生となった三摩律は、「巣ごもり」ですっかり弛んでしまった身体を鍛え直し、このところ引き締まったボディラインを取り戻した二年生である。 秋の日、キャンパス内のトレーニングルームで日課のルーティーンをこなした律は、ちんまりと小柄で痩せて、長い前髪で双眸を覆い隠した歳下の同期・矢束蒼と出会う。 「僕は、酔漢に絡まれていた僕を救ってくださった『王子様』を探しているんです」 そんな素っ頓狂なことをほざく矢束であるが、なんだか放っておくこともしがたく、律は彼の「王子様」探しの手伝いをすることに。酒を呑みながらアイディアを出し合った末、酔っ払った矢束をおぶって彼の家へ訪れた律は矢束に唇を奪われる。 意外なことではあるが、律には矢束との時間が少しも不快ではないどころか、女装に憧れを抱きつつも勇気が出ずに下着女装で自分を慰める彼と、抵抗なく夜を共にすることが出来てしまった。 国内最大のゲイ・タウンである宿木橋を本拠とする女装ロックバンド「ヴェル・デ・ラ・ビット」のファンである矢束と「頭にセの付く友達」となった律は、あまりに筋力と自信に乏しい矢束を鍛えてやることを思い付くが、矢束の反発を招いてしまう。そこへ現れたのは、矢束以上に小さく中学生のように幼い容姿の四年生・中寉。彼の口から語られた、学内に「王子様部」なるサークルが存在し、彼らは活動として日々人助けを行なっていること、矢束を救ったのは王子様の一人であること、女装メイドがいることなど、概ね下らぬ真実を携え、律は矢束を「王子様部」の部室へ連れて行く。 中寉は「ヴェル・デ」のボーカルであり、「王子様部」の学外部員であり女装メイドである蒔田は同バンドのキーボードであった。二人に丸め込まれ、矢束は蒔田の代役として学祭の日、「王子様喫茶」を催す「王子様部」のために念願の女装を叶えることに。しかし、律は中寉と蒔田の「二人は付き合ってるの?」という問いに頷くことは出来なかったばかりか、蒔田の「俺と遊ぼう」という誘いに応じてしまう。 翌日、蒔田に指定された場所は出掛けてみれば、そこには中寉に連れられた矢束もいた。四人で行ったボートレース場で律は、中寉にも蒔田にもパートナーがいることを知らされ、自分の中に矢束への明確な思いがあることを自覚するに至る。矢束から前夜、中寉に連れられた自身の身に起きた出来事を聴かされ、改めて中寉蒔田から「二人は付き合ってるの?」と訊かれたとき、律の答えは一つしかなかった。 学祭の後夜祭ライブ、「ヴェル・デ」のライブを特等席で眺めながら、律はメイド服の矢束を抱く。矢束は誰より可愛い「お姫様」だった。そしてどうやら律も、矢束にとってはたった一人の「王子様」になってしまったようである。