あらすじ
「――ハハハ! この世の『幸せな方の』夢を握り潰し、『幸せな方の』希望を根絶やしにしてやる!」 言い方に気遣いながら、魔王は今日も今日とて魔王らしく振る舞う。 早く倒されて魔王をやめたい、と思っているのは内緒。 「出たな、魔王め!」 50年ぶりにやってきてくれた勇者たち。 「ようこそ人間ども。せっかく来てくれて誠に残念だが、貴様らはここで全員死んでもらう」 吐かねばならぬ定番のセリフに、本音が混じるのは仕方がない。 遠路はるばる自分を倒そうと来てくれる勇者たちには、もはや感謝の念しかなかった。 そんな魔王だから、討伐に失敗した勇者たちに丁寧な礼を尽くすのは当然だった。 彼らを蘇生させ、眠っている間にそっと地上に返すのだ。 しかし「また50年待ちか……」としょげ気味だった魔王は、あろうことかひとり倒し忘れたまま、礼を尽くし始めてしまう。 「来てくださって本当にありがとうございました。蘇生して送り返しますね。また次も――」 「……ど、どうして魔王が勇者たちの蘇生を?」 「………」 本作はこんな気遣い魔王が、地上に転生しなければならなくなったお話。 皆様に読んでいただけますように。