あらすじ

新緑の訪れと共にやってきた隣人は、誰よりも不器用で一生懸命な人だった。
そんな彼女の一挙手一投足を見守っているうちに、平凡で退屈だった僕の人生は一変する。


【注意】
以下はあらすじではなく梗概(ネタバレ)です。
本作をお読みになってくださる方は読まずに本編の第一話へとお進みください。


ある年の三月末の土曜日。
来客を報せるチャイムで起こされた社会人五年目の『桜木弦(さくらぎげん)』は、隣室に引っ越してきた新大学生『相馬流風(そうまるか)』と出会う。
初対面にしてあまりにあけすけとした流風に気圧された弦だったが、昼食を共にしたあと近場の海に足を運ぶまでに至ると、表裏のない彼女の人となりに好意の感情を抱くのだった。

出会ったその日のうちに親しくなった二人は、やがては互いの部屋を行き来するまでの仲になっていた。
そして四か月後のある日、流風から告白をされる形で交際がスタートする。
数年後、今度は弦からのプロポーズを流風が受け入れたことで二人は結ばれたのだった。
海の近くに建てた家に移り住んだ二人は、やがてその愛の結晶たる子を授かり蜜月を迎える。

しかしその翌月、仕事中の事故で弦が帰らぬ人となってしまう。
絶望に打ちひしがれる暇もなく臨月を迎え女手ひとつで娘を育てることになった流風だったが、周囲の人たちに支えられながら日々を懸命に生き、瞬く間に二十数年の時が経った。
立派に成長した娘が嫁いでいったその日、流風は弦の遺影の前に立つと再び訪れた二人だけの穏やかな日々に頬を緩ませてみせた。

さらに長い時が経ち、すっかりと年老いた流風は子や孫らに看取られながらその生涯に幕を下ろす。
流風の亡骸を乗せた霊柩車の助手席には、彼岸から彼女を迎えに来ていた弦の姿があった。
かつて二人が出会い愛を育んだ町の景色がゆっくり車窓を流れ、車はやがて町外れにある斎場に着くと車輪を止める。
流風の棺が銀色の扉の奥に運び込まれるのを見届けた弦は、一足先に海の近くの家に帰りひとり彼女の帰宅を待っていた。
日が沈む少し前になり戻ってきた流風に、弦は自分が早逝し苦労を掛けてしまったことを詫びる。
そして二人はいつの日か行った、あの懐かしい海へと足を運んだ。
水平線の向こうに沈む太陽を見送った弦と流風は、もう二度と離れぬようしっかりと手を取り合い常世へと旅立ったのだった。

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アルファポリス
アルファポリス2023/06/03
  • 現在の作品いつかあなたとまた、あのはじまりの海で