あらすじ
『考証者』と『時渡』――それは、歴史を正す役目を負う者だ。 数年前、それは書籍の記述から始まった。 歴史書、古文書、そうした時代を伝える書物の記述が、突然、書き換わっていってしまったのだ。有り得ない時代に、有り得ないことが起こっている。 それはやがて、人々の認識、知識にも波及し、やがて本来の歴史が歪み始めた。 その歪みを正し、歴史の保全を行うため、急ごしらえで結成されたのが、歴史保全機構。そこに属するのが、史料・史実と異なる事象を見つけ、正す力を持つ『考証者』と、考証者を過去に連れゆき守る力を持つ『時渡』だ。 遠見澪(とおみ・みお)は、考証者として選ばれた女子大生。元より歴史や古典好きの知識が役に立ち、着任早々、考証者のエースとして活躍をしていた。 そんな彼女と組む時渡・烏丸孝史郎(からすま・こうしろう)は、ちょっとした問題児。実力は機構のトップも認める折り紙付きなのだが、女好きの不真面目男で、そのうえ、元警察官ながら良くない噂があるのだ。 そんないまひとつ信用のおけないパートナーとの微妙な距離感を持て余しつつ、いままで四度、澪は時を渡り、歴史を正していっていた。 現代に伝わる歴史史料。そこに書かれ、伝えられた記載を知識として蓄え、武器に変え、史実と異なる事象を見つけ出すのだ。 鉄砲が伝来してしまった源平合戦。仮名手本忠臣蔵が生まれなかった江戸時代。 ――大小様々な、史実と違う事象が渦巻く時代を考証しながら渡り歩き、澪と孝史郎は次には平安時代へと時を超えた。 そこはソメイヨシノが盛りを迎え、清少納言と紫式部が内裏で顔を合わせてしのぎを削る、鬼が実在する時代へと変貌していた。時代を元に戻すには、すべての時代考証的な誤りを見つけ出さなければならない。 あとひとつの誤りを探して、澪は孝史郎とともに、鬼の闊歩する平安の都を探し回る。 持て余し気味の彼との距離が、ふいに縮まる、小さくも大きな事件が待ち構えていることを知らぬままに――