あらすじ

「今晩あたり、狐が降るかとおもって」 工場に勤めて漫然と日常を過ごす《僕》は、寂れた峠にひとりたたずむ女を見掛けて、おもわず声を掛ける。 彼女はひとつに結わえた髪を揺らし、振りかえるといった――今晩、狐が降るのだと。あまりにも現実離れした言葉に戸惑いながらも《僕》は彼女の面影が何処か懐かしく感じられて、一緒に狐が降るまで待つことになる。 「あの、何処かで遇ったことがありませんでしたか」 「――――それならきっと、想いだしてくださいね」 《僕》は指を折るようにひとつひとつ、想い出をたどる。 田舎の町。騒がしい蝉の声と噎せかえるような草いきれ。神社の夏祭りと、ゆかたの紅緋い袖。ふたりで火をつけた《きつねはなび》――毎年、新しい夏が巡ってきた、あの頃のことを。

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カクヨム
カクヨム2021/08/13
  • 現在の作品狐降る夕、君を想ふ