あらすじ
【あらすじ】 春の昼下がり。行くあての無い旅の途中でふと、ビルの奥へと続く通路に目が留まった僕は、誘われるよう足を踏み入れた。 裏路地に抜ける道だろうかと思った先は、時から忘れられたような光あふれる中庭。古い階段を上った先には、爽やかな風が通り抜ける隠れ茶屋があった。 出迎えた年配の女主人クリソコラは、僕の冷たくこごった胸の内を見透かし、このカフェで働きながら過ごしてみることを提案する。何かもを捨てて投げやりな気持ちを抱えていた僕は、春風に誘われたこの出会いに縁を感じ、住み込みで働くことにした。 そこで出会う、様々な人々。 三日月型のクロワッサンを焼く、パン屋のマキさん。 小瓶を住処とした小人――ホムンクルスを友達とする少女。 卵に絵を描き、生きていることに感謝し旅立つ人。 思ったら即行動の、明るく元気な常連さんのカナコさん。 花の精霊や近所の猫たち。宇宙ステーションと地上に別れて暮らす恋人に、メイドロボを連れた少年。冷たい雨の下で出会った少女を温かなお茶で迎え、僕は店を訪れる少し不思議な人たちと、ゆるやかな時を共にする。 時は流れ、季節はやがて夏から秋に変わる頃、僕は捨てて来た過去と向き合う時を迎える。それは幼い頃に父を喪い、引き取られた先で起きた出来事だった。 三次元仮想空間――メタバース内に構築した大切な場所。そのデザインを巡る諍いに、僕は育ての親となり暮らした相手の立場を理解しながらも、感情を押し込められずにいた。 人の優しさを知り、前を向く強さに気づかされる。 季節が一巡りするころ、僕は世界の形に向き合う。 © 2020-2023 Tsukiko Kanno. 重複掲載「エブリスタ」17話以降は順次更新。