あらすじ
幼い頃からの両親の虐待。小中でのいじめ。16歳にしてホームレス。そんな女の子には、名前がなかった。 親に、名前を呼んでもらった記憶は無い。小学校でも、中学校でも、下駄箱には『ブス』『馬鹿』『死ね』の名前。教師さえ、出席の時に自分の名前を呼んではくれない。 新聞配達で、何とか漫画喫茶でシャワーを週2、3回浴びるだけで、服も2、3着しかなかった。家は、段ボールのお城。消えない街のネオンが、電気代わり。 16歳の彼女は、働こうと思うが、困ったことがあった。名前を書かなくていい履歴書がない。「どうしよう」と、仁王立ちになって、2時間近く、書店の履歴書が置かれているコーナーに突っ立っていた。 その時、話しかけて来た店員が、鳳駿だった。丁寧に接客してくれたが、「名前を書かなくていい履歴書はありませんか?」などと、聞けるはずもなく、そのまま、書店を出る。 そして、段ボールのお城に戻って、再び出ようとした瞬間、ぶつかったのが、またしても鳳駿だった。優しくされて、思わず涙が出た少女だったが、名乗れない。そう言うと、駿は、咄嗟に、『平安名天稀』と、名前を呼んだ。 そして、そのまま、2人は駿の部屋で同棲を始める。 1日目。『お風呂に入ると良い』と駿に言われ、お風呂に入る為、天稀は、脱衣所で服を抜いだ。すると、目に入って来たのは、洗面台の鑑に映し出された、体中の火傷の跡だった。思わず叫ぶ天稀。驚いた駿は、思わず脱衣所に入ってくるが、バスタオルい一枚の天稀に、慌てて、扉を閉める。すると、余りの傷跡に、ショックを受けた天稀は、脱衣所の鍵を閉め、手首に剃刀を当てる。 その状況を察した駿は、『死なないで』と連呼する。何とか自殺を思いとどまった天稀は、駿の紹介で、駿がバイトをしている書店に雇ってもらえることになった。天稀は、一生懸命働き、本当に優秀な人材だと、店長も喜んだ。 しかし、1年が過ぎた頃、突然、駿のアパートから、天稀は、姿を消してしまう。それっきり、天稀は、駿の前に姿を現すことは無かった―――…。